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DATE: 2016/09/16(金)   CATEGORY: 秘書 響子(01-20)
秘書 響子(2)
 通勤電車に乗るのは数年ぶりになる。通勤客で混雑した車内も、人の息づかいも今の響子には爽やかだった。ただ全てが爽やかというわけではなく、混雑を寄りどころに手や身体を押し付けてくる男の行為だけは不快のなにものでもない。

 終点で響子は降りて地下鉄に乗り換えて二駅目で降りる。駅の階段を上って地上に出た響子にとっては久しぶりの都会だった。街路を歩く響子のハイヒールも軽やかな音を響かせている。

 響子は五分ほど銀杏並木の街路を歩いて超高層のビルの前で立ち止まった。テナントの社員が続々と建物の中へ吸い込まれていく。響子は時刻を確認してから人の流れに任せて建物の中へ。

 エレベーターに乗り35階で降りる。中堅の会社なのに受付があり案内嬢までいる。響子は案内嬢に採用通知を見せて事由を説明した。しばらくして美しい女性が迎えに来てくれた。響子は彼女の後について事務室の中へ。

 三十五階のフロアのすべてを占有しているから明るく広々としている。ブラインドを開けた窓からは春の陽光が射している。響子は女性の後に続いて通路を歩いて行く。

「去年の暮れに、このビルに引っ越してきたのよ。明るくて広いでしょ」

 女性が振り向いて言う。顔がはっとするほどに美しい。

「ええ、とっても」

 響子も微笑して返す。

 営業部、開発部と過ぎ、掲示板の文字も新しい企画部の前にくる。

「機構改革で新しく企画部を設けたの」

 響子が頷くと女性は前に向き直って歩きだす。そうして総務部の前を通って仕切られた壁に突き当たる。ドアには秘書・社長室と記されている。

「片山さんの席はこちらです」

 女性がそう言ってドアをノックして中に入る。響子も彼女の後に続いた。

 勤務することになる秘書の席がどのようなものなのか響子は気になっていたが、机の配置をこの目にして胸を撫で下ろした。部屋は広く二つの机が観葉植物を境にして間隔を広げて置かれていた。そしてドアに一番近い新しい机の上には自分の名札が置かれている。

「こちらが片山さんの机とロッカーよ。私の席はこちらです」

 自分の席を示された響子は女性にお辞儀をして返す。
 響子は彼女が先輩になる秘書だと今になって気がついた。もっとも、こんなに綺麗な女性が普通の事務職にいるとは思ってはいなかったが…。

「いま社長がきますから、こちらでお待ちください」

 響子は自分のロッカーにハンドバックを仕舞うと応接間のソファーに腰を下ろした。倫子はパーテーションで仕切られた窓際の社長の席へと姿を消した。
 
 響子はようやく肩から力を抜いて気を弛めた。思った以上に会社は大きく社員も多い。それに先輩の秘書が美しい人なので身が引き締まる思いと安心感みたいなものがあった。


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