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DATE: 2017/02/25(土)   CATEGORY: 秘書の査定
秘書の査定(2)
 珈琲タイムが終わり、ふたたび小野田の出題が始まった。

「一般競争入札と指名競争入札の相違は?」

 その質問は過去に小野田から出題されたものだった。その時は答えられなかったが帰社してから調べている。倫子は調べたときの記憶を辿りながら、なんとか答えることができた。  

 小野田の質問は続く。
「受注した学園都市開発は都市計画法でいう何地域?」

「たしか第一種住居専用地域だった思います」
 芙蓉不動産の工事事務所で目にした都市計画図を思い出して倫子は答えた。

 小野田はさらに突っ込んできた。
「住居地域と第一種住居専用地域の相違は?」さらには「第一種と第二種の相違は?」と。

 倫子は知っている範囲内で答えたが抜けおちている部分があまりにも多かった。倫子は自分の不勉強と知識の無さをお詫びをした。

 小野田は倫子の不勉強に意地悪な笑みを浮かべる。
「秘書の席にも都市計画図と建設六法が置いてある。事業部から決裁文書があがってきたとき、わからないことがあったらなぜ調べない。調べていれば答えられることだ」

「申し訳ございません」
 倫子は両手を膝に置いて謝った。

 小野田はさらに出題する。
「一級の秘書検定から抜粋するから。そのつもりで」
 
 倫子はただ黙って頷いた。

 小野田は秘書検定のコピーを手に取った。
「空気を構成している元素は?」

「酸素、窒素」
 倫子は答える。

「まだあるでしょう」
 小野田はそう言うが、短大卒の倫子には二つの元素が限界だった。理系は大の苦手だった。

 小野田はさらに出題してくる。
「海抜〇メートル一気圧で沸点100℃の水は、約四千メートルの富士山頂になるとおおよそ何度ぐらいで沸騰します?」
「…わかりません」

「日本列島に梅雨をもたらす気団を述べなさい」
「…わかりません」
 倫子はそう答えて視線を膝元に。

 小野田は手にしていた秘書検定のコピーを乱暴にテーブルに置いた。
「一般教養はCだな」
 
 倫子は小野田の厳しさに打ちのめされた。

 その倫子を見つめる小野田には満足そうな笑みが。その笑みの裏には、倫子という秘書は美貌の女体だけが取り柄という事実を本人に知らせしめる意図が見え隠れしている。

「いずれは仕事を広げて小野田建設にしたいところだが、そうなると秘書検定の一級ぐらいの教養のある若い女性が一人ぐらいはいないとな。来年は一流大学卒の秘書でも入れてみるか」
 小野田はここぞとばかりダメ出しをする。

 小野田特有の美人を虐めて快感に浸る悪い性格からきていることを倫子は知る由もない。そればかりか、秘書の新規採用と同時に総務に左遷されるかもしれないと自虐感に陥っていく。

「来年の俸給額は未定にしておこう…」
 小野田はそう言ってソファーから立ち上がると社長席の方へと歩いて行った。

 応接間に一人残された倫子は悲壮感に打ちのめされていた。去年の芙蓉不動産の工事を受注した功績で新たな実績が無くても許されるものと思い気を許していた。部長以上の俸給を頂いているのにもかかわらず、芙蓉の社長のゴルフの相手をしていれば許されるものと。

 このままだと俸給も大幅に下げられる。そうなれば母の入院費用はもちろんのこと、新築マンションのローンの返済も危うくなるかもしれない。

 ソファーから立ち上がった倫子の足は社長席の方へと歩いていく。



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